=ポンソナ講座= ◆2016年11月19日14:00〜16:30 於船員会館第二会議室◆

 

 聞き取り・聞き書きの仕方とありようを考える

  一戦争体験を中心に一

石原昌家(沖縄国際大学名誉教授)

 

 

配付資料

◎ 資料1 研究ノート仲地哲夫「沖縄県史」の戦争体験記録を編集する意義(沖縄国際大学 南島文化紀要2014年)

◎ 資料2  石原昌家 1.生活史法をとおして 生活史法の基本的姿勢 生活史法の基本的テクニック(3 沖縄出稼者と定住一異文化接触と同化過程『新版ライフヒストリ 一を学ぶ人のために』谷富夫編、世界思想社 2014年)

 

 

配付資料の説明:

 資料1は、戦争体験の聞き取り、聞き書きが沖縄でスタートするにあたって、1960年代 の「沖縄県史」の編集事業にあたっていたのが沖縄史料編集所だった。その職員だった仲 地哲夫(現•沖縄国際大学名誉教授)さんが、当時のメモが3年ほど前に見つかったので、 それを基軸にしてまとめたものである。沖縄戦の住民の体験記録を開始するにあたって、 琉球政府時代にどのような観点•視点で取り組もうとしていたかを知る、貴重な内容であ る。仲地さんしか知らない内実が記されている。

 資料2は、資料1にもとづく沖縄県史沖縄戦記録2の聞き取り•聞き書きからスタートし た石原の経験を、簡潔にまとめたものであり、聞き取り•聞き書きのノウハウを、若者に 伝授しようとした内容である。

 

1、沖縄県史における聞き取り•聞き書きをめぐる諸問題

 資料1、では仲地哲夫さんが当事者であったがゆえに書き記していないが、仲地哲夫さん や安仁屋政昭(現•沖縄国際大学名誉教授)さんから、なんども聞かされた「沖縄県史」の聞き取り•聞き書きをめぐる諸簡題について述べていく 琉球政府時代に企画された「沖縄県史」は、24巻のうち3巻が戦争の通史編(第8巻)と 住民の戦争体験記録(第9巻と第10巻)から成っている。

  第9巻は、戦前小説家として有名な宮城聰氏と詩人•美術評論家の星雅彦氏が、座談会方 式で沖縄南部の激戦場だった地域で聞き取りをして、証言者の話した通りに文字おこして 掲載した。

 第10巻は、第9巻の方式に対して、仲地さん、安仁屋さんら若手の人たちが、資料1にで てくる先輩方と何日にもわたる大激論を重ねた結果、若手中心で聞き取り調査を実施して、 話し手の証言を、検証して話した通りの記録ではなく、小見出しをつけるなど、聞き手による編集を行って、読者に読みやすいように若干の加工をしていく方針に切り替えたという。 若手というのは、沖縄の歴史教育者協議会(小中高校大学の社会科教員、歴史家などから なる学会組織)のメンバーで20代、30代前半のひとたちが中心だった。

 

2、1970年から若手中心の聞き取り・聞き書きによる「沖縄県史第10巻」の編集

 一沖縄の 聞き取り•聞き書きのモデル化⇨

 1970年12月、儀部景俊(故沖国大名誉教授)、安仁屋政昭、仲地哲夫、石原昌家らが、 戦争体験の聞き取り•聞き書きの視点を確立するため、本部半島、伊江島(阿波根昌鴻さ んから聞き取り)を数日かけて旅した。昼、共同で聞き取りした体験証言を、夜、宿屋で 議論•討論を重ねていき、共通認識を形成していった。

 

3、聞き取りした成果が、ただちに、戦跡めぐりのガイド資料へ 米軍統治下の沖縄では、沖縄渡航が許可されなかった教員が多かった歴史教育者協議会で は、172年5月15日、沖縄が「日本復帰」するや全国大会を沖縄で実施することになった。沖縄の歴史教育者協議会と沖縄県史10巻の執筆者グループが、全国の教員を受け入れることになった。

  ⇨観光バスを借り切って、全国から来た教員の基地戦跡案内をすることになり、今日の基地戦跡の平和ガイドの先鞭をつけることになった。

 4、資料2 生活史法の基本的姿勢 生活史法の基本的テクニック 事例:与那国島での陸軍中野学校出身からの聞き取り 「中野は語らず」が鉄則の中野学校出身者が語りだした聞き取りの仕方